封鎖中のミラノから イズミふうこの日記

イタリア語と日本語(時々英語)で得る情報は、どれだけ同じなのか?どれだけズレているのか?

ロックダウン(封鎖)は虐待やDVを増加させる

ミラノで封鎖が始まってから一ヶ月近く経ちました。

完全に外出禁止、警察が見回って違反者には罰金ですので、国民全員が家から一歩も出ないでリモートワークだの子育てだのNetFlixマラソンだのをしている状態です。

 

(ちなみに2週間くらい前には、世界で一番大きいポルノサイトがイタリアからの接続者だけに無料サービスをしていました(笑)。 あの頃は「イタリア(だけ)が全土封鎖で大変だ」という空気だったのに、今や・・・。)

 

私にはずっと気になっていることがありました。

この完全な外出禁止令の中で、児童虐待やDVが増えるのではないか、と言うことです。

 

例えば幼児のいる共働き家庭で、24時間ずっと家族と家にこもりきり。

毎日ウィルスや将来への不安を抱えつつ、慣れないリモートワークをしながら、外へ出れなくてストレスの溜まっている幼子の世話をする。夫もしくは妻も、仕事の邪魔をする子供についつい声を荒げてしまうが、気分転換に散歩も出来ない。全員がピリピリイライラ。

そして、この生活がいつまで続くかわからない・・・

 

もし、家が狭かったり、もともと夫婦仲が安定していなかったら?お金がなかったら?

そんな日々を精神的に安定して過ごす、と言うのは難しすぎるチャレンジなのではないか?

 

居住環境と経済状況はかなり重要なポイントです。

家の大きさはどうか、庭があるのがベストだけど、せめてバルコニーがあるのか、買いだめを繰り返しても余裕のあるキャッシュがあるのか、など。

 

東京で「ロックダウン」の可能性について話題になって来たので、現実はどうなのか調べてみました。

 

イギリスの新聞ザ・ガーディアンでは

「世界中のロックダウン(封鎖)で家庭内暴力DVが急増」

と言う記事がありました。

https://www.theguardian.com/society/2020/mar/28/lockdowns-world-rise-domestic-violence

 

全訳したいところですが、長くなるのでザクっとまとめます。

 

「世界中の封鎖されている国で家庭内暴力が急増している。

武漢の調査では、該当する時期に報告された被害の90%が新型コロナウィルスの影響で起こっている。ブラジルではすでに40−50%の増加が見られる。スペインのカタルーニャの相談窓口への相談数が最初の数日だけで20%増加、キプロスでは30%増加。

イタリアの相談窓口へは電話でなく、メールや携帯メッセージで助けを求める声が届く。

 

厳しい封鎖の続くスペインでは、被害者女性が逃げ出した場合は違反にならない、と言うルールにしているにも関わらず、3月19日には子供の目の前で夫に殺された女性がいた。

 

全ての人にとって家は安全な場所ではない。

子供や女性への暴力被害は新型コロナウィルスへの対策というロックダウン(封鎖)の副作用である。

 

他にもNYタイムズ、各国の新聞で同じような記事がありました。

主に経済的な不安要素が増えることで、もともと暴力的だった夫(妻によるDVが最近話題ではありますが記事のほとんどは被害者は女性と子供でした)が、もっと暴力的になる、外出禁止なのでシェルターや学校などの逃げ場がない、という内容が多かったです。

 

でも、私は「普通の人」が、ロックダウンの毎日のストレスを溜めることによって暴発してしまったり壊れてしまうことがあるのではないか、と思うのです。

 

自分の封鎖生活の中、「もし、家が狭かったら」「もし、夫と仲が悪かったら」「もし、仕事が忙しかったら」と想像したことがあるのです。幸い、私や周りの人々は、案外楽しく毎日を暮らしているのですが(人間はどんな環境にも慣れます)、でも一歩か二歩間違えればヤバイことになるなー、と想像する瞬間はあるのです。

 

実際イタリア人の友人が「夫と毎日別れたいと思う。毎日疲れ果てて子供に辛く当たってしまう」と言うのを聞くと、外出禁止が続けば続くほど精神的にキツイと思います。

子供がいないカップルでも、ハネムーンや結婚式準備の比ではないくらいに夫婦仲が試されます。

 

イタリアでは、政府の新型コロナウィルスの情報サイトに、封鎖生活の中でも精神的に安定を保つため、カウンセラーに繋がるホットラインが載っています。

でも、そこで救われる人は、助けが必要な人のうちのほんのわずかだと思うと胸が痛むのです。

 

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リモートワークと子育ての両立