封鎖中のミラノから イズミふうこの日記

イタリア語と日本語(時々英語)で得る情報は、どれだけ同じなのか?どれだけズレているのか?

伊でアビガン試用へ:新聞コリエレ・デラ・セーラの記事全訳

ついに本日(3月23日月曜)アビガンの試用を開始するであろうイタリアからの記事です。

イタリアで一番歴史ある新聞コリエレ・デラ・セーラの記事全訳してみました。

記事は前日3月22日のもの、後半はイタリアが翻弄されたフェイクニュース、やはり新型コロナの治療薬としてネットで話題になったロシアのアルビドールについて書いてありますね。

原文:https://www.corriere.it/salute/malattie_infettive/20_marzo_22/farmaci-miracolosi-russia-giappone-covid-19-bufale-rete-b07f468a-6c33-11ea-8403-94d97cb6fb9f.shtml

 

イタリア医薬品庁(AIFA)は、日本のCovid-19治療薬について月曜日に協議する。

ベネト州知事のザイア氏は同州での試用の開始を発表したが、イタリア医薬品庁(AIFA)はブレーキをかけている:「アビガンには有効性と安全性を保証する臨床結果が無い」

 

 <以下記事本文>

新型コロナウィルス、Covid-19に対する薬物やワクチンはない。しかし、ネット上には「奇跡の薬」と言われるものが溢れている。このうちの一つ、アビガンはSars-Cov-2陽性患者に対して中国ですでに使用されている薬だ。

日本に旅行しているローマからのビジネスマンが、YouTubeでこの薬について語り、話題になった。しかし、薬の実際の有効性については専門家の中でも意見が別れる。

 

「科学的証拠が無い」

ウィルス学者のロベルト・ブリオーニ氏は言う。

「ロシアの薬(やはり新型コロナウィルスと闘う奇跡の薬として話題になったがフェイクニュースと結論づけられた:当ブログ注)、ビタミンC(摂取することで新型コロナウィルスに対する防御になるというフェイクニュース:当ブログ注)、イブプロフェインの危険性(同ウィルスの感染者が摂取すると悪化するというフェイクニュース:当ブログ注)、ACE阻害薬(降圧薬の一種であるこれらの使用者が同ウィルスに感染すると重症化するというフェイクニュース:当ブログ注)」専門家であるブリオーニ氏は続ける。「これらは全てナンセンスだ。新しい情報は保健省から来るものだ。ソーシャルメディアやYouTubeからではない。」

 

イタリア医薬品庁(AIFA):「この薬は認可されていない。」

 

ベネト州知事のルカ・ザイア氏は、同州で臨床実験を始めようとしている。

知事:「YouTube上にあるアビガンに関するビデオは出回っている。イタリア医薬品庁(AIFA)はこの試みに許可を出してくれたのでベネト州で試用されるだろう。明日23日月曜日には開始できることを願っている。」

しかし、一方のイタリア医薬品庁(AIFA)はそれにブレーキをかけているようだ。今のところC0vid-19の治療でファビピラビル(アビガンの一般名)の有効性と安全性の関する臨床研究はなく、試用実験の可能性については月曜日に議論されることを強調している。

「この薬は2014年3月にインフルエンザの治療薬として日本で認可された抗ウィルス剤であり、その試用は他の抗ウィルス剤が無効な場合に限定されている。」イタリア医薬品庁(AIFA)は説明する。「この薬はヨーロッパでも米国でも認可されていない」Covid-19での使用に関しては「重症ではない患者を用いた小規模な研究データのみが知られている」

 

委員会は月曜日に協議する予定

「既存のデータでは、血液からのウィルスの消失などを示唆しているようだが、実際の臨床現場でのデータが不足している」「3月23日月曜日にもっと話し合う予定だ」「イタリア医薬品庁(AIFA)は「フェイクニュースや危険な情報に対して、必要に応じては法的措置を講じる権利を持っている」と締めくくった。

また、マリオ・ネグリ研究所のシルビオ・ガラッティーニは言う。「アビガンは疾患の初期に投与された時のみ効果があるように見受けられるが、感染者の多くに症状がなく、研究に対照被験者がないため、薬が効いた結果なのか、それともどちらにせよ軽症で済んだのか、どちらなのかを確認することが難しい」

 

中国では340人の患者がアビガンで治療

ガーディアン紙(イギリス大手新聞社:当ブログ著者注)によると、中国の武漢と深センで患者340人の治療にアビガンが使われ、成功したという。薬を使用した患者は平均して4日後に陰性に転じたが、未使用の患者は平均して11日かかった。

薬の製造元である富士フイルム富山化学からのコメントはない。

中国国立バイオテクノロジー開発センター所長のチャン・シンミン氏によると「安全性が高く、治療に明らかに効果がある」とのこと。富山化学(富士フイルムの医薬品部門)は2014年にこの薬を開発し、日本は2月からSars-CoV-2の患者の治療に使用していた。

 

名前による混乱

2つ目の「ストーリー」はロシアからやってきた。

数日前5つ星運動のエリオ・ランヌッティ上院議員がツイッターで呟いた。

「一般的にインフルエンザに試用される薬であるアビドール(Abidol)は、ウィルスが細胞膜を通過して内部に侵入し、複製することを防ぐ。アビドール20mgはロシアの薬局で購入できる」

このツイート内容はソーシャルメディアやワッツアップ(欧米で普及している、LINEのようなチャットアプリ:当ブログ注)で広まったが、これはフェイクニュースだった。アビドールはロシアでは販売されていない。おそらくこれはアルビドール(Arbidol)であろう。こちらは販売されており、フェイクニュースとして広まった際、表記を間違えてアビドール(Abidol)とも呼ばれていたのだ。

 

イタリア医師会全国連盟(Fnomceo)によるとアルビドール(Arbidol)とは「抗ウィルス作用をもつ、有効成分がウミフェノビルである薬で、インフルエンザの原因となるウィルスによる疾患の症状を緩和したり短縮したりする。」しかし、どのくらい効果があるかは不明のようだ。

 

中国での試用

「ここ数週間、Sars-Cov-2によって引き起こされる病気であるCovid-19にもこの薬の試用は提案された」と外科歯科医師会は言うが、Sars-Cov-2に対する有効性を示す科学的証拠はない。

中国ではArbidolの試用も開始されたが、現時点では結論に達していない。

「したがって、この薬がすでに試用されている他の薬剤よりも好ましい、効果がある、と信じる理由はなく、Sars-Cov-2によって引き起こされる疾患の治療法とは考えられない。これに関する研究は少なく、重要ではない科学雑誌に掲載されている」 

 

誤解を招く広告

モスクワのシェレメテボ国際空港で、薬局でアルビドールを購入する二人のイタリア人の動画がソーシャルネットワークで出回っている。パッケージを見せながら「なぜ私たちの国ではこんなに死者が出るのだろう?この薬がないからかな?」

それだけではない。ロシアのラジオチャンネルではアルビドールはCovid-19に対する薬として宣伝されているのだ。ロシアの代理店スプートニクによって「誤解を招く広告」としてそれらのコマーシャルは禁止されている。

 

有効性は不明

イタリアと米国ではこの薬は販売されておらず、似ている薬:例えば前回のインフルエンザのパンデミックで使われ、疑わしい結果しかないオセルタミビルなど、もない。

イタリア医師会全国連盟(Fnomceo)のは言う。「これらは秘密の製品でも未知のものでもない。この薬は特定のカテゴリーに属し、研究されており、ヨーロッパやイタリアで販売されいてる多くの製品が属している。有効性はそれほど明らかではない。」

ロシア医学アカデミーは「薬物の有効性をしめす科学的証拠はなく、既存のデータは非常に疑わしい」と述べている。

 

イタリア医薬品庁(AIFA)はウミフェノビルに関する議論にも介入し、インフルエンザA型およびB型の予防と治療にロシアで販売されているが、ヨーロッパや米国では認可されていないことを説明した。ウミフェノビルは、中国では一部の患者に使用されているが、「利用可能なデータは少なく、科学的に質が高くはない上に、非常に少人数で得た数字だ」とイタリア医薬品庁(AIFA)は強調する。

したがって現在「Covid-19の治療またはSars-CoV-2感染の予防に置けるウミフェノビルの有効性を示す科学的証拠は不十分であり、他の治療の代替としての使用としても同様である」。

 

原文サイト

https://www.corriere.it/salute/malattie_infettive/20_marzo_22/farmaci-miracolosi-russia-giappone-covid-19-bufale-rete-b07f468a-6c33-11ea-8403-94d97cb6fb9f.shtml

 

 * 私はプロの翻訳家ではありません。

細かな間違い、固有名詞の表記違いなどあると思います。

それにしても。

いやーーーーーーーーー、長かった!

最後まで読んでいる人いるのかな?

(あ、むしろこのブログ、始めて3日なので読者まだゼロやったわ・・・)

途中で諦めそうになりました。でも、コリエレ・デラ・セーラの記事はいろんなニュースの元になるので他の記事では意味がない、と思って頑張りました。

後半はほぼロシアの薬のフェイクニュースの話でしたけど。

 

死者が増え続け、苦しむイタリアが、フェイクニュースにも翻弄されてきたのが分かります。同じ間違いをしたくない、期待を持ちたくない、と言う感じなのでしょうね。

「新しい情報は保健省から来るものだ。ソーシャルメディアやYouTubeからではない。」と言うブリオーニ氏の言葉が感慨深い・・・。

確かに今回の新型コロナはインフォデミックと言われているくらいにフェイクニュースとの戦いも多いよう。だからと言ってネット情報はデマだと言う前提でいると、地球の裏側で誰かが発見してくれた何かを見逃してしまい、防げた悲劇もあったかもしれないのです。

 

ああ、今度こそ・・・今度こそ・・・

 

**一部誤字脱字を訂正しました。