封鎖中のミラノから イズミふうこの日記

イタリア語と日本語(時々英語)で得る情報は、どれだけ同じなのか?どれだけズレているのか?

伊アビガン試用は貴重な資源・時間・命の大きな賭け *インフォデミック(infodemic)とSNS

(タイトル *インフォデミック(infodemic)とは、「根拠のない情報の広範囲にわたる拡散、それに伴う社会混乱。information+pandemic。今回の新型コロナウィルスについてWHOがこれはパンデミックでなくてインフォデミックだ、と指摘。)

 

今日も窓の外の救急車のサイレンを聞くなか、夫は週に1度の買い出しへ。私は子が昼寝している隙にブログを書いています。

 

(イタリアでは現在、一人で散歩したりジョギングすることすら禁止で、買い物は一家に一人だけ、という徹底した外出禁止が続いています。)

 

さて、先日、夫(イタリア人)と「新型コロナウィルスの治療薬としてアビガン試用にやっと踏み切ったイタリアについてどう思うか」という話をしていました。

 

過去記事を読むとわかるのですが、そもそもイタリアでアビガンが注目され始めたのは、東京に旅行していたイタリア人男性がソーシャルメディアにアップした動画がきっかけです。

(過去記事:https://fukononikki.hatenablog.com/entry/avigan この記事に載っている原文のリンク先で、そのきっかけとなった動画も見れます。)

 

このビデオで男性は

「イタリア中はゴーストタウンなのに、東京にはこんなに人が街に溢れている。なぜなら日本には治療薬のアビガンがあるからなんだ!イタリアでは何人も死んでいるのに!我々にはなぜこの薬がないのか、これは大手製薬会社の陰謀だ!」

というような、イタリア人的かつソーシャルメディア的な誇張した煽る表現をしています。これがネットで話題になり、政府は試用に踏み切ったわけです。

 

私:「でも、本当にアビガンが効いて皆が助かるなら、それを知るきっかけになったこの動画のおかげでもあるんじゃないの?」

夫:「動画のおかげ、とは言えないよ。もし、薬が効かなかったり、副作用があったりしたらどうなる? 」

私:「でもイタリアは医療崩壊して死者出まくりで、もう打つ手がないじゃん。失うものはないし、やれることはやった方がいいんだから、やっぱり良いことじゃないの?」

 

夫:「この薬を試用するということは、例えば従来のやり方に使っていたリソースを割くということだよ。ちょっとずつだけど地道にベッドの数や呼吸器を増やしていく、劇的な効果はないけど、確実な方法。それができるはずだった時間や資源を割いて、アビガンを使ってみるというのはコストのかかる賭けなんだ。

 こういう重大なことは、ネット情報に煽られた一般市民が政府にプレッシャーをかけて実現させることじゃないと思う。煽る側は責任をとる必要もない。」

 

ああああ、なるほど!確かにーーー!

 

この記事を訳した時、(https://fukononikki.hatenablog.com/entry/avigan)、アビガン試用に対して反対していたというウィルス学者のブリオーニ氏の言葉が心に残りました。

「 新しい情報は保健省から来るものだ。ソーシャルメディアやYouTubeからではない。」

ってやつ。

 

その時の私は「頭の固い保守的なお爺さんは、本当に困るわ」みたいな感じで思ったわけですが、確かに「確実に効く従来の方法」を実行できる時間、労力、資源を「結果はわからない」賭けに使うわけで、人の命がかかっているのだからブリオーニ氏の言葉はもっともなのです。それがどんなに「効くらしいよ」という評判があっても、現時点でのデータは限られているのですから。

 

昨日、テレビで新型コロナウィルス患者を治療している医師が

「中国では回復患者の血しょうを他の患者に投与することで治療したケースがあるんだ。効果があるんだ。」

と言っており、インタビュアーが

「なぜイタリアではやらないのですか?」

と聞くと

「それは僕でなくて、治療法の許可を出すトップの人に言ってくれよ」

と疲れ果てた顔で呟いていました。

 

現場もトップもそれぞれが正しく、そして必死です。

 

 

イタリアの感染数、死者数、検査数の変化。今がピークと引き続き予想(希望を込めて・・・)

昨日、「死者の増加数に変化がなくなっているので今がピークでは」という勝手な推測を書きましたので、引き続き今日の数字も見てみようと思います。

昨日と同じく経済誌 イル・ソーレ24オーレの新型コロナウィルス専用ページからです。

原文:https://lab24.ilsole24ore.com/coronavirus/

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左から、現時点での陽性数、死者数、回復者数、トータル感染者数

過去24時間の死者は662人、昨日より約20人減りました。すごい数ですが、増加していなかったことにやはりホッしてしまいました。

 

1日ごとの人数変化を表したグラフはこのような形に。

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1日ごとの増加数 赤:今までの感染者数 橙:現在の陽性数 緑:回復者 黒:死者

黒のグラフの死者の増加数は二日連続で下がっています。

やはり、今がピークなのでしょうか?

 

ただ感染者数が今日はグッと上がっています。

次のグラフを見るとわかるのですが、なんと今日の検査数は昨日よりも1万件近く多いのです。今日だけで36615件検査しています。

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1日の検査数と陽性数の変化 グレー:検査数 赤:陽性数 線グラフ:陽性率

こうしてみると、陽性の確率は上がっていないので、そこまで悪くはない感じもします。

明日もグラフがなだらかでありますよう・・・。

 

イタリアの感染数、死者数、検査数の変化をグラフで見る。経済誌イル・ソーレ24オーレより

 私たちは毎日「今日の感染数・死者数」をチェックします。

毎晩六時にその日のデータが更新されるので、それぞれの人数の増加率を前日と比べたりするのが日課となっています。

 

 今日はイタリア最大の経済誌イル・ソーレ24オーレが、まさに1日の増加率をグラフにしてくれている新型コロナウィルス専用ページを見つけたので紹介しようと思います。

(サイト:https://lab24.ilsole24ore.com/coronavirus/ )

 と、いうのも、この4日間ほど死者数の増加が平らになってきているので、素人目なのですが、イタリアは今がまさにピーク中なのではないかと思うのです。

 ロンバルディア州がところどころ封鎖され初めて4週間、イタリア全土が封鎖されて2週間と4日間なので、そろそろ効果が出てもいい時期ですし・・・(と、いう期待も大いにこもっているのですが。)

 

まずはイタリアのデータです。

左から

橙:現在の陽性数 黒:死者数 緑:回復者数 赤:感染者数合計

イタリアの現時点での陽性数、死者数、回復者数、トータル感染者数

左から、現時点での陽性数、死者数、回復者数、トータル感染者数

小さい字で見にくいのですが、それぞれの数字の下に小さく「+何人」と書いてあるのが過去24時間で増えた人数です。

 

今日1日で増えた人数 

現時点での陽性数 +3,491

死者数 +683

回復者数 +1,036

トータル感染者数 +5,210

 

そして、イタリアのそれぞれの州での死者数を示すマップです。

イタリアの州別に死者数を示したマップ

イタリアの中のどの州で何人死者が出ているかのマップ

こうやって各州の上でクリックすると人数が出ます。私たちのいるミラノはロンバルディア州です。

 

そして、グラフ。他のサイトに比べても大変よくできています。

イタリアの感染者合計数、現時点での陽性数、回復者数、死亡数の変化のグラフ

グラフの上から 赤:感染者合計 橙:現在の陽性数 緑:回復者数 黒:死者数

3月21日に一日の死者が793人になり、感染者数ともどもグラフが急カーブになっています。このまま放物線を描いていくのかと目が回りました。

 

次に、1日の感染者、死者、回復者等の増加数を示したグラフです。

イタリアの1日の感染者、陽性、死者などの増加率を示すグラフ

一日の増加数の変化 赤:感染者合計 橙:現在の陽性数 緑:回復者数 黒:死者数

3月21日に793人が亡くなった日までは、1日の死者数が増え続け、それ以降はなだらかに平らになっているのが分かります。明日は少しでも減っていることを心から祈っています。

 

最後に、検査数に対する陽性の確率を棒グラフで示しています。

イタリアの新型コロナウィルス検査数と陽性数の変化

イタリアの検査数と陽性数 グレー:検査数 赤:陽性数 黒い線:陽性率

今日3月25日の検査数は27481件で、そのうちの陽性は5210件でした。

っていうか、イタリアはなぜこんなに検査ができるの!?

(アメリカでは検査キットがない、というニュースを見たので)

と、そこにビックリしたのですが、なんでもイタリアのブレーシャという街で検査キットが作られており、アメリカには輸出しているという話でした!

 

医療崩壊の現実と検査キット開発国であるイメージが合わない気もするけれど・・・

イタリアは「医療レベルは高いがキャパが小さいので崩壊してしまったケース」だと思うので、よく考えると何の不思議もないのかな。

「どの薬が本当に新型コロナウィルスに効くのか?」MITテクノロジーレビューの記事

  アビガンアビガンあびがん・・・と、イタリアにおけるアビガン試用の行方を追ってきたここ数日ですが(って言ってもまだたった3日間!24時間で状況が変わり続けるので時間感覚まで変わってきています。なんという毎日だろう・・・)、今日は少なくともアビガン関係での大きなニュースはありませんでした。

 目下、最前線にいる医療従事者たちは文字通り命を削って頑張ってくれています。「頑張る」という言葉が軽く感じられるくらいに。

 

そんな中でふと思ったのです。

イタリアがやっと試用を決めたアビガン、なぜ世界を変える勢いでニュースにならないのか?

イタリアの医薬品庁が恐れているように、効果はロシアのインフルエンザ薬並みなのか・・・?

( 過去記事の後半にイタリアが翻弄されたフェイクニュース、ロシアの薬アルビドールについて書かれています:https://fukononikki.hatenablog.com/entry/avigan )

 

そこで、興味深い記事を見つけました。

ノーベル受賞者輩出しまくりの米国マサチューセッツ工科大(MIT)所有のMIT Technology Reviewの記事です。

 

タイトルはまさに

「どの薬が本当に新型コロナウィルスに効くのか?」

 

(原文:https://www.technologyreview.com/s/615394/covid-19-coronavirus-best-drugs-in-treating-the-outbreak/

3月23日の記事です。時差があるので日本の24日かもしれません。

 

これも全訳したかったのですが、時間の関係で無理でした。

 

内容は超ザックリ書くと

「今の時点では治療薬はない。トランプ大統領が大絶賛のマラリアの薬は治験中で、効果が期待できるかもしれない。中国の実験では、ファビピラビル(アビガンの一般名)を投与したグループとロシアの薬アルビドールを投与したグループでは、酸素マスクや人工呼吸器を必要とした患者数はほぼ変わらなかった。だが、ファビピラビル(アビガン)を投与された方が早く回復した。HIV(エイズの原因となるウィルス)の治療薬は期待されたが、今のところ効果は得られなかった」

という感じでしょうか。

 

なるほど・・・酸素マスクや人工呼吸器を必要とする割合が変わらない、というのは知らなかった!でも、早く回復するということは、早く医療リソースを必要としなくなるので、本当ならやはり素晴らしいこと。マラリアの薬も期待してしまいます。

なんにせよ、副作用と効果とのバランスがポイントになってくるのでしょう。

 

 

 

 

伊医薬庁がアビガンの試用を許可。ヴェネト州に続いてピエモンテ州が試験的に使用。

新型コロナウィルスに関するイタリアの報道を全訳するシリーズ。

ついにアビガンの試用が医薬品庁から承認されました。

数日以内にイタリア各地で試用が開始されるよう。

毎日何百人が亡くなり、「今日の死者数」を聞く日々。

治療薬に関してはフェイクニュースに翻弄されてきたイタリアとしては、期待値を低くしながらも藁にもすがる思いでしょう。

 

在伊邦人の私としては、日本のニュースで早々とアビガンの名前を聞いた時から「なぜイタリアでは使わないのか」とこっそり思っていたので、私情も相まって本当にドキドキします。

 

今日は昨日のコリエレ紙と並んでイタリア最大の発行部数を誇るラ・レプッブリカの記事を全訳です。

原文:

https://www.repubblica.it/salute/medicina-e-ricerca/2020/03/23/news/covid-19_speranza_aifa_procede_su_sperimentazione_avigan_-252090636/

<以下は記事の全訳です>

新型コロナウィルス Covid-19: 希望。イタリア医薬品庁(AIFA)はアビガンの試用を認めた。ヴェネト州の次にはピエモンテ州も試用の申請をし、許可を得た。

昨日、ヴェネト州知事ルカ・ザイア氏が新型コロナウィルスに対する有効性を研究するために「日本の薬」の試用を進めるつもりであると発表した。それを受けてピエモンテ州も同じようにこの薬の試用を希望し、つい先ほど、保健大臣であるロベルト・スペランザ氏が医薬品庁からの許可がおりたことを発表した。

 

イタリア医薬品庁(AIFA)からの薬剤試用の許可

「医薬品庁のジェネラルマネージャーであるニコラ・マグリーニは、アビガンに関連する既存のデータを分析し、今朝の会議で、初期症状で薬剤がどのような効果をもたらすかを試してみる予定を立てた 」と、スペランザ氏は発表。「今後数日で、プロトコルは運用可能となる」

 

慎重になる専門家

アビガンとその効果について専門家たちはそれぞれ意見を述べている。

ウィルス学者のブリオーニ氏は「ナンセンス」とし、上級保健評議会会長のロカテリ氏は「選択肢として試したり検証することと、新型コロナウィルスのような重要な問題の解決策として決定することとは全く違う問題だ。治療法を見つけた、と断言する前に、正確で疑う余地のない証拠が必要だ。」と、記者会見で述べた。

「この薬は正確で疑う余地のない証拠を持っていないかもしれない場合もある。だから我々はがっかりしたりショックを感じたりしないように慎重になるべきなのだ」

 

薬剤の製造元である会社について

ネットでこの薬剤が話題になった後、製造元である富士フイルム富山化学は、日本では試験的に新型コロナウィルス感染の患者にこの薬が投与されていることを明らかにした。またファビファビピラビル(アビガンの一般名)は中国でも投与されていることを承知しているが、富士フイルムは上記の試験的な研究については関知しておらず、コメントをする立場にないということだ。現時点では新型コロナウィルス感染症に対する有効性と安全性は確立されておらず、富士フイルムは日本における臨床試験を開始する予定である。

 

* 私はプロの翻訳家ではありませんので、固有名詞、細かい部分などは正確ではない可能性があります。

 

 

伊でアビガン試用へ:ベネト州知事が国営テレビに「医薬品庁AIFAの許可を待っている」本日決定予定

昨日の記事にも出てきたベネト州知事のザイア氏。

今日はイタリア国営テレビRAIの中継で、「我々はアビガンを試用する準備は整っている。ただイタリア医薬品庁AIFAからの許可を待っている」と訴えています。本日3月23日に医薬品庁が決定予定です。

 

<以下、全国紙コリエレ・デラ・セーラの記事の訳です。>

原文リンクとビデオはこちら:https://video.corriere.it/cronaca/coronavirus-zaia-in-veneto-siamo-disponibili-sperimentazione-dell-avigan/236740e4-6ced-11ea-ba71-0c6303b9bf2d?intcmp=pastiglione_apertura_hp&vclk=pastiglione_apertura_hp|

 

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ベネト州知事ザイア氏:ベネト州ではアビガンを試用できる準備は整っている

ただいま州知事は国営テレビRai1で中継中です。

「我々は国内および国外の6種類の薬をすでに実験的に試用しているのですから、慎重に物事を進めなければいけない。今、日本の薬であるアビガンという新たな可能性がある。もちろん大きすぎる期待や幻想を国民に抱かせてはいけないが、我がベネト州はすぐに実行にうつす用意がある。ただ、当たり前だがイタリア医薬品庁AIFAの許可が必要なのだ。」

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とのこと。

インターネットのおかげで国民の多くが知ることとなったアビガンの存在。

「なぜ試用しないのか?」という声に応えるためにもテレビ中継で訴えているよう。

まさに今、現在イタリア医薬品庁AIFAの協議結果と許可をイタリアにいる私たちみんな、待っている最中です。

 

伊でアビガン試用へ:新聞コリエレ・デラ・セーラの記事全訳

ついに本日(3月23日月曜)アビガンの試用を開始するであろうイタリアからの記事です。

イタリアで一番歴史ある新聞コリエレ・デラ・セーラの記事全訳してみました。

記事は前日3月22日のもの、後半はイタリアが翻弄されたフェイクニュース、やはり新型コロナの治療薬としてネットで話題になったロシアのアルビドールについて書いてありますね。

原文:https://www.corriere.it/salute/malattie_infettive/20_marzo_22/farmaci-miracolosi-russia-giappone-covid-19-bufale-rete-b07f468a-6c33-11ea-8403-94d97cb6fb9f.shtml

 

イタリア医薬品庁(AIFA)は、日本のCovid-19治療薬について月曜日に協議する。

ベネト州知事のザイア氏は同州での試用の開始を発表したが、イタリア医薬品庁(AIFA)はブレーキをかけている:「アビガンには有効性と安全性を保証する臨床結果が無い」

 

 <以下記事本文>

新型コロナウィルス、Covid-19に対する薬物やワクチンはない。しかし、ネット上には「奇跡の薬」と言われるものが溢れている。このうちの一つ、アビガンはSars-Cov-2陽性患者に対して中国ですでに使用されている薬だ。

日本に旅行しているローマからのビジネスマンが、YouTubeでこの薬について語り、話題になった。しかし、薬の実際の有効性については専門家の中でも意見が別れる。

 

「科学的証拠が無い」

ウィルス学者のロベルト・ブリオーニ氏は言う。

「ロシアの薬(やはり新型コロナウィルスと闘う奇跡の薬として話題になったがフェイクニュースと結論づけられた:当ブログ注)、ビタミンC(摂取することで新型コロナウィルスに対する防御になるというフェイクニュース:当ブログ注)、イブプロフェインの危険性(同ウィルスの感染者が摂取すると悪化するというフェイクニュース:当ブログ注)、ACE阻害薬(降圧薬の一種であるこれらの使用者が同ウィルスに感染すると重症化するというフェイクニュース:当ブログ注)」専門家であるブリオーニ氏は続ける。「これらは全てナンセンスだ。新しい情報は保健省から来るものだ。ソーシャルメディアやYouTubeからではない。」

 

イタリア医薬品庁(AIFA):「この薬は認可されていない。」

 

ベネト州知事のルカ・ザイア氏は、同州で臨床実験を始めようとしている。

知事:「YouTube上にあるアビガンに関するビデオは出回っている。イタリア医薬品庁(AIFA)はこの試みに許可を出してくれたのでベネト州で試用されるだろう。明日23日月曜日には開始できることを願っている。」

しかし、一方のイタリア医薬品庁(AIFA)はそれにブレーキをかけているようだ。今のところC0vid-19の治療でファビピラビル(アビガンの一般名)の有効性と安全性の関する臨床研究はなく、試用実験の可能性については月曜日に議論されることを強調している。

「この薬は2014年3月にインフルエンザの治療薬として日本で認可された抗ウィルス剤であり、その試用は他の抗ウィルス剤が無効な場合に限定されている。」イタリア医薬品庁(AIFA)は説明する。「この薬はヨーロッパでも米国でも認可されていない」Covid-19での使用に関しては「重症ではない患者を用いた小規模な研究データのみが知られている」

 

委員会は月曜日に協議する予定

「既存のデータでは、血液からのウィルスの消失などを示唆しているようだが、実際の臨床現場でのデータが不足している」「3月23日月曜日にもっと話し合う予定だ」「イタリア医薬品庁(AIFA)は「フェイクニュースや危険な情報に対して、必要に応じては法的措置を講じる権利を持っている」と締めくくった。

また、マリオ・ネグリ研究所のシルビオ・ガラッティーニは言う。「アビガンは疾患の初期に投与された時のみ効果があるように見受けられるが、感染者の多くに症状がなく、研究に対照被験者がないため、薬が効いた結果なのか、それともどちらにせよ軽症で済んだのか、どちらなのかを確認することが難しい」

 

中国では340人の患者がアビガンで治療

ガーディアン紙(イギリス大手新聞社:当ブログ著者注)によると、中国の武漢と深センで患者340人の治療にアビガンが使われ、成功したという。薬を使用した患者は平均して4日後に陰性に転じたが、未使用の患者は平均して11日かかった。

薬の製造元である富士フイルム富山化学からのコメントはない。

中国国立バイオテクノロジー開発センター所長のチャン・シンミン氏によると「安全性が高く、治療に明らかに効果がある」とのこと。富山化学(富士フイルムの医薬品部門)は2014年にこの薬を開発し、日本は2月からSars-CoV-2の患者の治療に使用していた。

 

名前による混乱

2つ目の「ストーリー」はロシアからやってきた。

数日前5つ星運動のエリオ・ランヌッティ上院議員がツイッターで呟いた。

「一般的にインフルエンザに試用される薬であるアビドール(Abidol)は、ウィルスが細胞膜を通過して内部に侵入し、複製することを防ぐ。アビドール20mgはロシアの薬局で購入できる」

このツイート内容はソーシャルメディアやワッツアップ(欧米で普及している、LINEのようなチャットアプリ:当ブログ注)で広まったが、これはフェイクニュースだった。アビドールはロシアでは販売されていない。おそらくこれはアルビドール(Arbidol)であろう。こちらは販売されており、フェイクニュースとして広まった際、表記を間違えてアビドール(Abidol)とも呼ばれていたのだ。

 

イタリア医師会全国連盟(Fnomceo)によるとアルビドール(Arbidol)とは「抗ウィルス作用をもつ、有効成分がウミフェノビルである薬で、インフルエンザの原因となるウィルスによる疾患の症状を緩和したり短縮したりする。」しかし、どのくらい効果があるかは不明のようだ。

 

中国での試用

「ここ数週間、Sars-Cov-2によって引き起こされる病気であるCovid-19にもこの薬の試用は提案された」と外科歯科医師会は言うが、Sars-Cov-2に対する有効性を示す科学的証拠はない。

中国ではArbidolの試用も開始されたが、現時点では結論に達していない。

「したがって、この薬がすでに試用されている他の薬剤よりも好ましい、効果がある、と信じる理由はなく、Sars-Cov-2によって引き起こされる疾患の治療法とは考えられない。これに関する研究は少なく、重要ではない科学雑誌に掲載されている」 

 

誤解を招く広告

モスクワのシェレメテボ国際空港で、薬局でアルビドールを購入する二人のイタリア人の動画がソーシャルネットワークで出回っている。パッケージを見せながら「なぜ私たちの国ではこんなに死者が出るのだろう?この薬がないからかな?」

それだけではない。ロシアのラジオチャンネルではアルビドールはCovid-19に対する薬として宣伝されているのだ。ロシアの代理店スプートニクによって「誤解を招く広告」としてそれらのコマーシャルは禁止されている。

 

有効性は不明

イタリアと米国ではこの薬は販売されておらず、似ている薬:例えば前回のインフルエンザのパンデミックで使われ、疑わしい結果しかないオセルタミビルなど、もない。

イタリア医師会全国連盟(Fnomceo)のは言う。「これらは秘密の製品でも未知のものでもない。この薬は特定のカテゴリーに属し、研究されており、ヨーロッパやイタリアで販売されいてる多くの製品が属している。有効性はそれほど明らかではない。」

ロシア医学アカデミーは「薬物の有効性をしめす科学的証拠はなく、既存のデータは非常に疑わしい」と述べている。

 

イタリア医薬品庁(AIFA)はウミフェノビルに関する議論にも介入し、インフルエンザA型およびB型の予防と治療にロシアで販売されているが、ヨーロッパや米国では認可されていないことを説明した。ウミフェノビルは、中国では一部の患者に使用されているが、「利用可能なデータは少なく、科学的に質が高くはない上に、非常に少人数で得た数字だ」とイタリア医薬品庁(AIFA)は強調する。

したがって現在「Covid-19の治療またはSars-CoV-2感染の予防に置けるウミフェノビルの有効性を示す科学的証拠は不十分であり、他の治療の代替としての使用としても同様である」。

 

原文サイト

https://www.corriere.it/salute/malattie_infettive/20_marzo_22/farmaci-miracolosi-russia-giappone-covid-19-bufale-rete-b07f468a-6c33-11ea-8403-94d97cb6fb9f.shtml

 

 * 私はプロの翻訳家ではありません。

細かな間違い、固有名詞の表記違いなどあると思います。

それにしても。

いやーーーーーーーーー、長かった!

最後まで読んでいる人いるのかな?

(あ、むしろこのブログ、始めて3日なので読者まだゼロやったわ・・・)

途中で諦めそうになりました。でも、コリエレ・デラ・セーラの記事はいろんなニュースの元になるので他の記事では意味がない、と思って頑張りました。

後半はほぼロシアの薬のフェイクニュースの話でしたけど。

 

死者が増え続け、苦しむイタリアが、フェイクニュースにも翻弄されてきたのが分かります。同じ間違いをしたくない、期待を持ちたくない、と言う感じなのでしょうね。

「新しい情報は保健省から来るものだ。ソーシャルメディアやYouTubeからではない。」と言うブリオーニ氏の言葉が感慨深い・・・。

確かに今回の新型コロナはインフォデミックと言われているくらいにフェイクニュースとの戦いも多いよう。だからと言ってネット情報はデマだと言う前提でいると、地球の裏側で誰かが発見してくれた何かを見逃してしまい、防げた悲劇もあったかもしれないのです。

 

ああ、今度こそ・・・今度こそ・・・

 

**一部誤字脱字を訂正しました。